ティーン・ザ・ロック
「五月蠅い…」
「紅葉だって、ホントは彼が殴られるなんて良い気分じゃないでしょ…?
それでも毎日学校に来る彼の気持ち、考えた事ある!?
辛いんだよ…。彼だって、ホントは辛いんだよ!!
ぼろぼろになって、腫れあがる程に殴られたって
杉澤君には学校しか……っ」
そこまで言って、涙が溢れて、呼吸さえもまともにできない位に興奮していた自分に驚いた。
うまく息が吸い込めなくて、その後の言葉は行き場を失って、喉の奥に引っ込んだ。
その隙を付いて紅葉が口を開く。
「……五月蠅い。あんたなんか大っ嫌い。
…何も知らないあんたを引きこんで取巻きにするつもりだったのに。
何で逆らうのよ。黙って私の言う事を聞いてれば居場所だってあったのに…。
私よりも彼に出会うのが遅かったくせに。
どうやって彼を味方につけたの?…カラダ?お金?
教えてよ、ねぇ。あんたにできる事なら私だって…」
……そうだね。あたしなんかよりも、絶対に紅葉の方が可愛いに決まってる。
読モしてる事だって、女子からの人気だって、スタイルだって。
みんなみんなあたしよりも勝ってる。でも…。
「彼を守りたいって、思った事は無いの?」
「何、ソレ」
紅葉のやり方、なんとなく理解はできるんだ。
彼を誰の目にも触れさせたくないのだって、分かる。綺麗で儚い彼を、自分ひとりだけの物にしたいって思った時も確かにある。
そう出来たらどれほど安心できるか。彼に恋をしているあたしなら理解できるけど。
「…彼が笑わなくて良いの?」