ティーン・ザ・ロック





その時の事を思い出してか、彼女はキュッと自分の体を抱きしめながら続きを話してくれた。


「…逃げた先で林田が友達と帰る所に遭遇したの。


なにがあったって聞かれたけど、本当の事なんか言えなかった。あまりにも自分がみじめ過ぎて。


だから。彼が私を襲ってきたって、嘘を吐いた。


林田は激怒して彼を殴りに行ったわ…。でも、彼は自分が正しいと主張して……だから…」


何も言えなくなった彼女の言葉を、あたしが繋ぐ。



「…財布を盗んで、彼のした事の様に仕向けたんだね」


紅葉は頷く代わりに、長いため息を吐いた。



「…盗んだわけじゃない。林田が前の日にラブホで忘れたのよ。


アイツは送り迎えも自分の家の車だから、半日くらい財布が無くなってても気が付きもしないの。


あとは…分かるよね。嫌がらせのつもりだった。ちょっとでも杉澤に苦しんで貰えればそれで満足するはずだったのに…。

彼はめげなかったし、その態度に林田は腹を立てた。


だからもう、後には引けなくなった。


今まで偉そうな態度だったのに、今更謝りたくなんてないもの。


林田とは別れたけど、杉澤の存在がある限り、私たちは関わり続けるの」




分かった気がする。



彼女は、不器用なんだ。




子どもの様に、手に入れたいものが出来ると、何をしてでも手に入れたくなる。



怖い位純粋とはこの事だろう。





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