ティーン・ザ・ロック
ねぇ。
そう言って彼女の手を取って立ち上がらせる。
「行こうよ」
「はぁ!?何処に行くって…」
戸惑う紅葉。あたしの手を解こうと暴れ始めたけど、絶対に離さないって思った。
「杉澤君の所。行って、彼を助けようよ」
「何言ってんの!?私は何も言いたくないし、謝りたくないって言ったよね!?」
「……違うよ」
違うよ、紅葉。
何も言わなくても、彼はきっと分かってる。謝らなくったって、彼は許してくれる。
だからさ。
「林田を止めに行こう。紅葉がけしかけたんなら、止められるのも紅葉しか居ないじゃん」
「………」
「怪我させるのだって、ホントは辛いんだよね?」
「…分かった様な口きかないでよ」
「分かるよ…。あたしだって杉澤君の事……」
好きだから。
片思い同士だから分かる事だってあるんだ…。
でも、それっきり紅葉は口を閉ざしてしまった。やっぱり教える気にはなれないのかと思い、一人で行こうと背を向けた時。
「……科学室の裏にある木陰が林田と仲間の溜まり場。多分そこに居ると思う」
小さい声だったけれど、覚悟を決めた様子が感じられる声でもあった。