ティーン・ザ・ロック
大きくて小さな、嘘
ガッ って、鳴ったんだ……。
全てがスローモーションに見えて、林田の驚いた様な顔から、固く握った林田の拳が
ゆっくりと動くまでを目が全て追っていた。
―――――あたしの頬に当たるまでは。
鈍い音を立てて、力の加わった方とは逆に、勢いに乗って倒れこむ。
殴られた頬はだんだんと熱を持って来たし、口内は鉄の味がした。
幸い歯は無事だったけど、それでもやっぱり…痛いや。
「逢坂さん!!」
「杉澤君」
……紅葉と一緒にここまで来た時、丁度林田が彼に殴りかかるのが見えた。
何か思うより先に身体が動くって、こういう事なんだね。
気付いたらあたしは林田と杉澤君の間に立って盾になっていたんだ。
それで、こんなバカみたいな結果だ。
もう少し冷静だったら、林田を突き飛ばすとか、声を上げるとか。
そう出来てたらわざわざ殴られる事は無かったのになー…と、彼の顔を見ながら自分をマヌケに思う。
「血が…」
「…ダイジョブだってば。見た目より全然痛くないと思うよ」
「……でも。殴った事には変わりは無い」
あたしの事を心配してくれるのは本当に嬉しいんだけど…。彼の方が結構酷い事になってると思う。
顔こそは殴られていないけれど、ワイシャツからでも透けて見える程、殴られた個所は赤を通り越して紫になっている。