ティーン・ザ・ロック
家族以外の周りから、いつもそんな風に言われてきた。
『葉瑠ちゃんって、いっつもお兄ちゃんにべったりだよねぇ。
自分じゃ何にも出来ないじゃん。
ちょーっとお兄ちゃんがカッコ良くって、喧嘩も強いからってさァ
自分までトクベツな人間になったつもりでいるんじゃないの?』
小学六年の頃、仲が良いと思っていた女の子が、陰でそう言っているのを聞いてしまった。
確かに、口を開けば『お兄ちゃんが』と言うのが口癖だったあたしだけど
別に自分がトクベツな人間になったつもりなど無かった筈。
それなのに、彼女はあたしの事を何故悪く言っているのか?
答えは分からないが、きっと、あたしが彼女の気にくわない事をしてしまったからだろう。
でも、彼女はあたしを親友と呼んだ。
陰では悪口を言い、本人の前では親友だと持て囃す。
あたしも、何が不満か聞けばよかったのだが、今まで表面的には上手く行ってきたのに
今更何かを言って、危うい関係を壊したくなかった。
彼女が何を考えているのかなんて、今だって分からない。
何も言えず、何も聞けないあたしと彼女は、結局中三になった今でも“親友”のままだった。
親友って、なんだろうな……
「葉瑠?どうした?」
「え?」
兄の声でハッとする。
目の前には、ランプが光る自動販売機が。
考え事をするうちに、売店まで来てしまっていたのだろう。