ティーン・ザ・ロック




こんなになるまで…。よく我慢したと思う。


「…抵抗しなかったの?」



杉澤君も唇の端が切れて、血が滲んでる。メガネは、殴られた時に飛んでしまったのか、かなり離れた場所に、ひびが入った状態で落ちていた。



「……抵抗すれば、もっと酷く殴られるから…」


「…そっか」



「…でも、逢坂さんにこんな怪我をさせた相手に

大人しく従ってるだけじゃ居られないから」



彼はそう言って、あたしと林田の間に立つ。…いっちょ前に喧嘩しようって言うの?


……馬鹿だね、杉澤君。今までろくに喧嘩なんてした事無いんでしょう?



それなのに…。ずるいよ。



こんなカッコいい事されたら、益々好きになっちゃうじゃん。




「……んだよ。俺は悪くねぇぞ。

その女が勝手に出て来たのがわりぃんだよ」


いつもとは違い、睨みつけてくる杉澤君に動揺したのか、後ずさりしながらそんな言い訳をしてくる林田。



「…なら、殴った事だけでも謝るべきだ」



「はぁ!?お前誰に向かって口きいてんだ?

…なぁ、紅葉ィ。


やっぱ顔に何発かいれとかねぇと。お前だってこいつらが嫌いなんだろ?」



林田が紅葉に笑いかける。振り向くと、彼女は校舎の角の所で呆然と立ち尽くしていた。




「……夏目、さん」



そこでやっと杉澤君は紅葉の存在に気付いた様だった。


「…やっぱり、キミだったんだね」


責めている口調ではなかった。やっと真実が知れた、その安心感…というのも何だかおかしい気もするけど、でも正にそんな感じの口調だったんだ。

だから紅葉も、彼に何かを言う気になれたらしい。



「………杉澤。あのね、私ね…」



< 230 / 337 >

この作品をシェア

pagetop