ティーン・ザ・ロック
こんなになるまで…。よく我慢したと思う。
「…抵抗しなかったの?」
杉澤君も唇の端が切れて、血が滲んでる。メガネは、殴られた時に飛んでしまったのか、かなり離れた場所に、ひびが入った状態で落ちていた。
「……抵抗すれば、もっと酷く殴られるから…」
「…そっか」
「…でも、逢坂さんにこんな怪我をさせた相手に
大人しく従ってるだけじゃ居られないから」
彼はそう言って、あたしと林田の間に立つ。…いっちょ前に喧嘩しようって言うの?
……馬鹿だね、杉澤君。今までろくに喧嘩なんてした事無いんでしょう?
それなのに…。ずるいよ。
こんなカッコいい事されたら、益々好きになっちゃうじゃん。
「……んだよ。俺は悪くねぇぞ。
その女が勝手に出て来たのがわりぃんだよ」
いつもとは違い、睨みつけてくる杉澤君に動揺したのか、後ずさりしながらそんな言い訳をしてくる林田。
「…なら、殴った事だけでも謝るべきだ」
「はぁ!?お前誰に向かって口きいてんだ?
…なぁ、紅葉ィ。
やっぱ顔に何発かいれとかねぇと。お前だってこいつらが嫌いなんだろ?」
林田が紅葉に笑いかける。振り向くと、彼女は校舎の角の所で呆然と立ち尽くしていた。
「……夏目、さん」
そこでやっと杉澤君は紅葉の存在に気付いた様だった。
「…やっぱり、キミだったんだね」
責めている口調ではなかった。やっと真実が知れた、その安心感…というのも何だかおかしい気もするけど、でも正にそんな感じの口調だったんだ。
だから紅葉も、彼に何かを言う気になれたらしい。
「………杉澤。あのね、私ね…」