ティーン・ザ・ロック
だけど。
「紅葉ィ!!こっち来いよ!!」
林田がそれを許さない。紅葉はビクリと体を硬直させ、林田の居る方へと視線を向けた。
すると、さっきよりも柔らかい声で、彼は…林田は。小さなウソを吐いた。
「俺がコイツぶん殴るの、見ててくれるよな?
……お前は止めたけどさ、俺はこいつがムカついて仕方ねぇんだよ!」
「…何言って…」
「お前はただ見てりゃあ良いんだ!お前は俺を止めようとした!でもそれに逆らってコイツをぶん殴るのは俺なんだ!!分かったな!
…だからさ、もう、そんな顔すんなよ。な?
お前には笑ってて欲しいんだって」
何で林田は、自分だけの罪の様に言うのか。全てを知っているあたしには無意味なことだったけど
それでも、彼の気持ちだけは痛い位に分かったんだ…。
彼の小さなウソのは、紅葉を思っての事だった。
「……ケン。もう、良いよ」
「はぁ!?だから、止めても無駄だっての!」
来いよ、と言って杉澤君の腕を掴む林田。半ばヤケになっている気がするのは、その辛そうな表情のせいだろう。
紅葉もその様子は十二分に分かっている筈。
…だからこそ、彼を止める為に
言いたくないと言っていた真実を言葉にする気になったのだと思う。