ティーン・ザ・ロック
妙な沈黙を破って、口を開いたのはまた林田だった。
「…財布の事だけど。そう言う理由なら…お前じゃねぇんだろ?…悪かったな」
例の如く頭を掻きむしりながら、目線を誰に向けるでもなくそう言っていたけど…。誰に?なんて聞かなくても分かる。
「……別に。分かって貰えれば、それで…」
杉澤君がポツリと呟いた。
紅葉も『ごめんね』と、誰に向けてでも無く呟く。
みんな、不器用すぎるんだ。
紅葉は振られた事を根に持ってしまったし、林田は紅葉に嫌われたくなくて言いなりになっていた。
杉澤君だって、幾らでも弁解する機会はあった筈で……。
……そうだ。あたしだって、言い訳すら出来ていないじゃないか。
そうだよ…それに…。
「……杉澤君、ごめんね」
「……え?」
さっき、成り行きとはいえ紅葉に、彼の家庭の事情を話してしまった。それは謝るだけじゃ済まない事だって分かっているつもりだ。
だから、言おう。彼と同じ立場に、いつでも居たいから。
「さっき、紅葉に…杉澤君が産まれた理由を話しちゃったの。
本当に…ゴメン。こんなんで許して貰えるなんて思ってないけど…言いたい事がある」
「…………そんなの。…僕は大丈夫だよ」
優しく微笑んでくれるのは嬉しい。でも、やっぱりそれじゃ対等でいられないと思うんだ。
「…ううん。聞いて。
…紅葉にも、聞いて欲しい」