ティーン・ザ・ロック
きっかけ
恋人らしい事なんて、何も思いつかない。でも……。
「…お前ら、付き合ってんの?」
東京駅。
兄たちと待ち合わせたその場所に、あたし達はぎこちなく手を繋いで立っていた。
そこに現れた兄と留美を驚かせる位には、恋人同士の雰囲気を出して居たみたいでホッとする。
「……一番大切な人だから。あたしが告白したの」
「…僕だって、言おうと思ってたから……」
「え…そうなの……?」
そんな会話をするあたし達を見て、兄が『だーーーッ!!』と言いながら身体中を掻きむしり始めた。
「痒い!痒過ぎるぞお前らっ!!
そういうのはもっと人目を気にしてやれよー」
「…あはは…」
…自分だって、もう少し声のトーンを落として欲しい。それにしても…。
気になるのは留美の様子だ。いつもなら甲高い声で、何かしらの妨害はしてくるのに。
「……留美?」
この間の事が原因で機嫌が悪いのかと思い、躊躇いがちに声をかけてみたのだけど。
「…………」
その様子は、どう見てもいつもの彼女とは似ても似つかなくて。
兄に視線を移して説明を求めた。