ティーン・ザ・ロック
兄はちらりと留美を見てから、頭を掻く。
「それがさー…。なんか最近調子が悪いみたいで。
さっきも新幹線の中で吐いたりしてて…。
悪いんだけど、俺達は叔父さん達の家で待ってる事にするよ。
…ピクシーランドにはお前らだけで行って来れば?」
そう言っている間に、留美が口元を押さえてかけ出した。
「留美!…悪いんだけど、葉瑠。見に行ってくれないか?
流石に女子トイレまでは行けないからさ…」
「うん」
渡されたタオルと水を持って、留美が向かった方に走って向かう。
………ねぇ、まさか。まさかとは思うけど…。
「…妊娠?」
呟いた言葉は誰の耳にも届かずに スッと消えた。
トイレに着き、順番待ちをする女性たちをかき分けて、咳き込む声のする個室の前に立った。
「留美…?大丈夫?」
ノックをしながら名前を呼び続け、少し経った頃、彼女が中から無言で姿を現す。
「留美」
「……要さんに見に来いって言われたの?」
「…そうだけど…でも、あたしだって言われなくてもそうする位はできるよ」
「どうだか」
洗面台で手と口元を洗い終わった彼女にタオルを差し出す。
「……どうも」
一瞬躊躇ってからだけど、留美も素直にタオルを受け取ってくれた。