ティーン・ザ・ロック
嫌がる留美をずるずると引きずって、兄たちの元にたどり着いた。
「お…?大丈夫か?」
「…うん……」
「お兄ちゃん、あのね。留美が、話さなきゃならない事があるんだって」
「ん?」
ちょっと! と叫ぶように怒る留美だけど、もう遅い。
「…もしかして、身体の事か?風邪でもひいたのかな…。…辛いなら病院行くか?」
……鋭いんだか鈍いんだか、もうワケ分からない。
もごもごと口ごもる留美と、見当違いの結論に達して勝手にあたふたする兄。見ているこっちがイライラして来て、つい口を滑らせる。
「ちゃんと言いなって!!早くしないとまた悪阻(つわり)が…」
「……葉瑠、今なんて?」
……慌てて口を押さえたけど、もう遅い。兄は目を見開いて、今にもこぼれ落ちそうだし
留美は口をパクパクさせて、金魚の様に酸素を貪っている様な顔をしている。
「……ゴメン、後は任せたっ」
「え、ちょっと待てよ!お前なんつった?」
後の事を留美に一方的に押しつけて、杉澤君の手を取ってその場から逃げた。
二人の姿は、人ごみに隠れてすぐに見えなくなる。こっちから見えないなら、兄たちもあたし達を見つける事は出来ないだろう。
「……妊娠してたの…?」
すっかり話から外れてしまっていた杉澤君だけど、ちゃんと話は聞いていたようだ。
息を整えながら一つ頷く。
「…留美ね、あたしの事も考えて兄には妊娠した事を言わないつもりだったみたいなの。
あたしの帰る場所を作っている兄に、子どもなんかできたら帰る場所なんて無くなるんじゃないかって…。
…意外にね、良い子なんだって…。こんな事になってから気付いた。
……それでも、杉澤君まで巻き込んだのは許せないけど」
ふふふ と笑ってみせると、彼も力なく微笑んだ。