ティーン・ザ・ロック





でも と彼は繋げる。



「……養子の事…すっかり聞くタイミング逃しちゃったね」


「………まぁ仕方ない…かな」



ここに来るまでに二人で考えた。兄ときちんと話をしようって、そう決めていたのに。


せっかく彼にも着いて来て貰ったのに、留美の件でその意志もどこかに行ってしまったみたいだ。



「……このまま逃げちゃおうか」


悪戯っぽく笑ってみせると、彼は苦笑いを浮かべながら首を横に振った。



「…まだ…ダメだよ。お父さんとお母さんの事、聞くんでしょ?」


「……そのつもりだったけど…。これ以上兄を混乱させられないよ…。


それにね、ちょっとあてがあるんだ」


「…あて?」



一つ頷いて、ケータイのアドレス帳を開き、見つけた名前を彼の目の前にかざした。



「…恭介おじさん。父の従兄なんだけど…。

多分この人なら、あたしの実父母の事も知ってると思う。…ただ、話してくれるかどうかは別だけどね」


本当なら本人に聞ければ話は早いのだが


あたしの記憶をたどる限り、幸一という人には一度も会った事が無い。


しかも、その人は育ててくれた父の、父。つまりあたしから見ておじいちゃんの兄弟だ。




あたしがまだ生まれる前におじいちゃんは亡くなってしまったみたいだし、恭介おじさんのお父さんも一昨年亡くなったと聞いた。


もしおじいちゃんが生きていれば75歳。



幸一と言う人が何歳なのかは分からないけれど、名に“一”が付く位だ。きっと長男だろう。


少なくとも76歳のお父さん、なんて……。



想像すらできないけれど。




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