ティーン・ザ・ロック
「……何…考えてる?」
声をかけられてハッとする。顔を上げると、彼の顔が目の前にあって、思わず赤面してしまった。
「………何も。…大丈夫だよ。
…ね。杉澤君は、自由になったら何がしたい?」
話は変わってしまうけど、無償に聞きたくなった。
一緒に逃げてくれると言ってくれた彼。
何処に、とか、何の目的で とか聞かれたら困るけど
彼と一緒なら、何処までだって行ける気がした。
あたしも逃げたい。でも、一番は彼を逃がしてあげる事が目的で。
とにかく、彼の笑顔が引き出せる場所なら、地球の裏側にだって行ける気がした。
そんなあたしの想いに気付いているのかいないのか。彼はちょっと困った顔をしてから
「……何もしない、…かな」
そう言って微笑んだ。
「何もしない…?」
「うん、そう。
…何もせずに、ただ自然だけを見つめて居たい。
人間関係に悩んだり、難しい事なんか考えずに…。ただ、目の前の自然に生きる生き物を見つめて居たいんだ」
「……うん。きっと、叶えてあげるから…」
「……うん。僕も、君が望む事なら なんだってしてあげるよ」
どちらともなく互いの手を取り、強く強く握りしめた。
僅かにくすぶる、胸の奥の何かを消し去ろうとするように。
今はただ、お互いの手の温もりだけを感じていた………。