ティーン・ザ・ロック
山を登ったせいで汗ばんだ手。そんな事も気にせずに、自然に、どちらともなく手を繋ぐ。
鳥肌が治まらない。手を繋いでなければ、この地に溶けてしまいそうになる。
圧倒される 泣きたくなる。
それほどまでにこの木は、あたし達を包み込んできた。
最初は紅色だった視界も、やがて太陽が沈むと、一気に深い蒼色になった。
太陽の代わりに姿を現した月が、地上に向けて柔らかい光を落とす。
そうなるまで、浮かび上がる様に、堂々と地に根を張るその木から目が離せなかった。
「……ありがとう」
「……うん」
やっと口を開いた彼の感謝の意。
何に対してか なんて、聞かなくても分かるよ。
「……僕はきっとずっと、ここに来たかった」
「うん」
「……こんなに存在感のある木があるなんて。
月明かりだけで地面が見えるこの場所も。
星がこんなに綺麗に見える場所も……僕は知らなかった」
「うん」
「……一蓮托生…だね」
「……うん」
「…あの人は、結果の良し悪しに関わらず って言ってたけど…。
僕は、君と一緒に居ると良い事しか起きない気がする」
…ねぇ、気付いてる?
今のキミ、凄く輝いてるよ。
初めて嬉しい感情を出した様な、ぎこちない表情だけど
今までのどんな笑顔より、ずっとずっと、素敵な顔をしてるんだよ…。