ティーン・ザ・ロック
嬉しいんだけど…。ちょっとだけ彼が遠い存在に見えてしまって。
「悠馬…くん」
「え…?」
あたしと言う存在を彼に刻み込みたい。
そんな欲が出てしまう。
「…名前、呼んでも良い…?」
ささやかな。ささやか過ぎる進展でも
「…勿論。
…僕も、葉瑠って、呼んでも良いかな…」
あたし達には大きな進歩。
「…もっと、呼んで…」
「…葉瑠」
「もっと」
「葉瑠」
「…ん。嬉しい…」
名前を呼ばれただけで、身体の芯が熱く燃える。じわじわと愛しさがこみ上げてくる。
「葉瑠……。僕の目を見て…」
「………」
僅かに顔を上に向けると、彼があたしの頬を両手で包み込んで来た。
彼の手は冷たいけれど、触れられた部分から熱を帯びて行く。
「…ずっと、僕と一緒に居てくれるかな…」
「……プロポーズみたいだね」
「……そうだね」
二人でクスクスと笑い合い、そして………。
月明かりに照らされ、地面に落ちた影が、重なった。
初めてのキス。
あたし達を 月だけが見ていた。