ティーン・ザ・ロック
来た時と同じように手を繋いで、ゆっくりと山を降りる。
迷いが無いわけじゃないけれど
決して嫌なわけでは無い。それだけは分かるよ。
周りに立っている建物は純和風なのに、この場所だけお城の様な外観で。
違和感だけはあったけれど、綺麗な建物だという事が躊躇する事無く足を動かす。
色んな部屋の中から一番安い部屋を選んだ。
エレベーターでその階へ上がる間も、ずっと、ぎゅっと、手を繋いだままだった。
着いた部屋の中は、普通のホテルと何ら変わりのない造りで。
「メニューブックもあるよ…」
「…何か頼もうか」
テレビを付ける勇気は無かったけれど、二人でソファーに腰をおろしてメニューを覗き込むと、何だか家に居る様な安心感が出て来てしまった。
家…か。
今頃皆、何やってるのかな…。あたしの事探してくれてたりするのかな…。
兄はきっと慌ててるんじゃないかな…。
そんな事、して欲しくないのに 探されているって考えると少しだけ安心できるのもまた事実で。
「……葉瑠…?」
「あ……」
ちょっとだけ、罪悪感を覚えた。
「…怖い?」
泣いてしまっていたあたしを気遣う彼。
背中をさする手の動きが優しかった。