ティーン・ザ・ロック
裏切り
「………が……で、今―――………」
「……ん…?」
悠馬の声で目が覚めた。
やっぱり寝ていたんだ、あたし。
ベッドのそばにあるデジタル時計を見ると、もう明け方に近い時間で。薄暗い部屋から見る窓の外は うっすらと明るくなっていた。
「……悠馬…?」
確かに彼の声は聞こえるのに、部屋を見渡してみても姿は見えない。
静かに起きあがって声のする方へと足を進めた。
「……はい。…そうですね。じゃあ、9時ごろに……はい」
「………?」
電話…?誰と?何を話してる…?
僅かに反響している。声はバスルームから聞こえてくるみたいだ。
音を立てない様に扉を開けると、こちらに背を向けて電話をしている彼の姿が見えた。
「……はい、その駅で待ってます。……心配おかけして申し訳ありません」
「…悠馬?何言ってるの?」
思わず呟いてしまったせいで彼を驚かせてしまったみたいだ。振り向いたと同時にケータイを取り落とし、あたしの足元に滑り込んで来る。
「…あっ」
彼の手が伸びる前にそれを耳に当ててみる。
『……おい、大丈夫か?』
「…お兄……ちゃん?」
『…葉瑠?おまえ、そこに居るのか?』
ブツッ……
電話を切って電源を落とす。彼はどうして兄と連絡を取っているの…?
考えなくても分かる。彼が、裏切ったからだ。