ティーン・ザ・ロック
大きな手
納骨も終わらせ、今度は別の会場での精進落としだった。
精進落とし、なんて。カッコいい言い方をしてるけど
要は昔話だらけの宴会でしょ?…なんて考えてしまう位、中学生のあたしにはウンザリだった。
まともに料理も食べられず、お酌をしながら絡まれる。
お父さんやお母さんの、あたしの知らない過去を聞けるのは楽しかったけど
それは酔っ払っていない人限定だ。
「葉ぁ~瑠ぅ~ちゃんっ」
「きょ…恭介さん…」
がばりっ とあたしに抱きついてきたのは、父のイトコである恭介さんだった。
あたしからだと、おじいちゃんの兄弟の息子、という血縁で
確か父と同じ42歳だった筈。
それなのに、父よりも見た目は若く、よく日に焼けた肌が海の男 と言う感じでカッコいい。
でも酒癖は悪いみたいで、こうやって抱きつく相手を探してうろうろする所が玉に傷だ。
「葉瑠ちゃぁ~ん…!俺は悲しいんだよぉォォオオ」
…泣き上戸も玉に傷。
「涼(リョウ)も巳緒(ミホ)さんも、俺の大事な親友だったのにさぁ…。
こんなに一気に居なくなっちまったら、俺の心の拠り所はどうなっちまうんだー!?」
あたしの父と母を名前で呼ぶヒトに、久しぶりに会った気がする。
叔父さんも叔母さんも、あたし達の前では『父さんたち』と呼んでいたせいもあるだろう。
恭介さんの叫び声を聞きながら、何だか知らない人の死を悲しまれている様で
少しだけ複雑な気分だった。