ティーン・ザ・ロック
耳鳴りさえ起きそうな沈黙の後、兄が俯きながら口を開く。
「…確かに、そう思ったのも事実だ。
でもな、俺には幸せになる資格なんて無いって思ったから…。
親にもお前にも、今まで言わなかったけど、外じゃ結構言えない事までしたんだぜ?俺。
それでも、心配だけはかけたくなくて何も言わなかったけど…。
お前と一緒だよ、葉瑠。俺もお前に嫉妬してた。
家族の事は大好きだけど、それだけじゃ押さえきれなかったのかも知んねぇなー。
…知らないかも知んねぇけど、結構俺、お前と比べられたりしてたんだぞ」
……そんなの、知らなかった。
お母さんもお父さんも、いつだって兄の事を自慢げに話していたし
あたしの前だと、逆に社交的な兄の事を見習えと言われていた位で。
……知らない所で二人、お互いを比べていたのかもしれない。
お互いが どちらが両親から愛されているかを比べ
お互いが 勝手に答えを見出していた。
間違った二人。
でも、あたしよりも兄の方が辛かったのは確かだ。
“実の子は俺の筈なのに”
きっとそう思っただろうな……。
「…今まで散々好き勝手やって来た俺だから。この期に、何かに縛られるのも良いかと思ったんだ。
責任感を持つ、って言うの?…守るべき相手がはっきりと分かったから。
だから、勝手だけど、お前を幸せにしてやろうと決めた上での行動だ。
妹として、兄として。
血が繋がって無いとかそんな事は関係ない。
ただ、俺たちは兄妹だから…。たった二人きりの兄妹だから」