ティーン・ザ・ロック





「留美!!」



兄の叫び声が聞こえてくる。



トイレの中から出て来た兄は、顔面蒼白で意識の無い留美を抱えていた。


声に反応して駆けあがって来た叔父さんに、叫び声の様な声色で兄が言う。


「叔父さん!!病院!」


「…今玄関につけるから!!」


「留美…おい、留美!」


「ゆっくり運んで!」





バタバタと、皆が動くのを、呆然と立ちすくむ事しかできなかった。


だって、何が起きてるのか、分からない………。




「葉瑠ちゃん、行こう」


「…え?」


雪さんに名前を呼ばれて意識を取り戻す。


「…彼女、結構酷いツワリだったんだよ。昨日病院に行ったら、栄養も取れてなくて子どもが危ないって言われたらしい。

倒れる様な事があったら入院だって言われてたけど…。まさかこんなに早く…。



とにかく、一緒に行こう。……話したい事も、あるんでしょ?」



「…はい」





留美、留美。



もしかして、貴方も一人で戦って来た一人なの…?



いつも強気で、何を言われても動じない子だったから。



人に弱みを見せなかっただけだって、今更気付いた。



頼りたくても頼れない、そんな子だったのかもしれない。



…そう言えばあたし、彼女の事何にも知らないや……。



留美、話がしたいよ…。




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