ティーン・ザ・ロック
「……酷い顔。あたしより、アンタが点滴した方がいいんじゃないの?」
開口一番に憎まれ口をたたく留美に少しホッとする。
「……心配したんだから」
「…心にもない事を」
フン と盛大に鼻で笑ってそっぽを向く留美だったが、少し照れくさそうにしていたのを見逃さなかった。
「…それで?文句でも言いに来たの?」
顔を壁に向けたままだったけど、彼女は分かってる。あたしが話をしに来たって事を。
「……留美の気持ちが聞きたいと思ったから。
…何で、小学校の時…あたしの悪口を言ってたのかな…って」
「…そんなの、決まってるじゃない。
アンタが馬鹿だったからよ」
「こら、留美。もう少し言い方があるだろ」
たしなめる兄に、少しだけ口をとがらせている。
二人のこのやり取りでハッとした。
もしかしなくても、兄は留美の本性に気付いていた…?
兄の前では、猫なで声を出して居る所しか知らないのに
そっけなくて汚い言葉も平気で口にする様な留美も、兄は知っていた…?
知っていて付き合っていた……?
「……何よ、その顔」
「…いや、お兄ちゃんが留美の口調に驚かないから…」
「…やっぱり馬鹿ね、アンタ。要さんがあたしの事を何も知らないで付き合ってると思ってるの?
……自分を曝け出しても、要さんなら受け入れてくれる。
それが分かってるから付き合ってるの。…あんただって、あの男の事、信頼できるくらい曝け出してんでしょ?」