ティーン・ザ・ロック
「それは構わないけど…。
それは、どんな理由で頭を下げているの?」
優さんが柔らかく聞く。でも、威圧感のある声でもあった。
頭を下げたままで、悠馬は話を切り出す。
「……僕の母は、学校の理事長と事実婚状態で一緒に暮らしています。
僕の弟は理事長と母の間に出来た子です。
…僕は、弟を守りたい。救いたいんです。
……風馬は、何故僕と名字が違うのか知りません。何故僕があまり家に居たがらないのかも知りません。
聞かれても、答えられなかった。
再婚すると言っている割に、何も行動に移していない母達の事を、どう説明すればいいのか分からなかった。
…僕の家での居場所は、風馬の前でだけ造られる。風馬が僕に与えてくれるから、僕は今まで頑張ってこれたんです。
だから、今度は僕が弟に安心できる居場所を造ってあげたい。
でも、それには葉瑠さんの力が必要です。…僕にはまだ、一人で立ち向かえる力は無い。
……もしかしたら彼女まで巻き込んでしまうかもしれない。それでも良いと言ってくれるなら…
少しの間、葉瑠さんをお借りしても良いですか…?」
……凄いよ、悠馬。律儀にそんな事まで出来るなんて。
前の彼じゃ絶対に考えられなかった事。無気力で無関心だった彼とはまるで違う。
だから。
「あたしからも、お願いします――――…」
力になりたいって思うんだよ。
幸いにも人は変われる。あたしが、彼が、兄が、留美が、紅葉や林田がそうだった様に…。
きっと誰もが変わる事が出来るから。