ティーン・ザ・ロック
「……顔を上げなさい」
優しい声が降って来た。
「私もね、悠馬君。キミの家庭の事情は気になっていたの。
お節介だと思ってくれても良いけど、キミの身体にある傷は、人の手によって故意につけられたものよね。
……それは、誰が?」
隣で聞いていた雪さんが『母さん!』と心配そうに声を上げていた。
それを優さんが右手一つで制す。
「…質問を変えるわね。それは、今から葉瑠ちゃんが行く所に居る人が付けたのかしら?」
「……はい」
「………いざという時、あなたは葉瑠ちゃんを守れる?
傷一つなく私たちの元に返してくれると誓える?」
…優さんは、あたしを心配している。でも、それと同じくらい悠馬の事も心配しているんだ。
本当にあたしは恵まれてる。
「…葉瑠さんだけは、僕が必ず守ります。彼女を守れるなら、僕はどうなったって……」
「その答えは満点じゃないわね」
「………」
「分からない?」
優さんは彼の目の前に移動して、肩を掴む。驚いた表情を見せる彼には構う事無く、言い聞かせるようにして、愛の形を言葉にして見せるんだ。
「私は、あなたにも無事でいて欲しい。
あなたは自分の存在がどれほど周りにとって大切なものなのか、分かっていないわ。
…命を粗末にする様な言葉は聞きたくない。
葉瑠も守って、貴方自身も守ってくれると誓って」