ティーン・ザ・ロック
会場の中が、徐々にざわめきを取り戻していく。
だけど…一人取り残されるように、周りはあたしを誰も見なかった。
「葉瑠ちゃん」
「優さん」
唯一声をかけて来たのは優さんだけだった。
でも、叔父さんと同じ、気をつかっている表情をしている。
「恭介さんは酔うと訳の分からない事を言うから…。気にしないでね」
「え…。はい…」
「うん。じゃあ、いっぱい食べて?
もう、お酌は大丈夫みたいだから」
言いながらオレンジジュースを手渡してくる優さん。
「ありがとう」
コップになみなみと注がれた液体に口を付けながら、
本当は気になって仕方ないのに と思った。
叔父さんだけならともかく、兄までもが話を止めたのだ。
そして二人で会場を出ていった。
会場に居る人も、あたしを見ようともしない。
…と言う事は、あたしだけが話の内容を知らない と考えるのが一番の答えだ。
それに、恭介さんが言っていた≪幸一≫という名前……。
聞いた事がある気がする。
でも、思い出せなくて…。頭の中で、繋がらない糸が絡まって行くように感じた。