ティーン・ザ・ロック


噛み締めていた唇を開いた瞬間



「…何が可笑しいんですか」



低い声でそう言ったのは、悠馬の方だった。


彼は至って冷静に見えた。でも、怒っても居た。


静かにすごむ彼は、いつもの温厚さなど忘れてしまった様な、冷たい目をしている。



「……可笑しいわよ。自分の息子がこんなに見る目が無いとはね」


「あなたは……。



あなたはいつもそうだ。僕が選んだものをことごとく否定する。


右が良いと言えば左にしろと言い


白が良いと言えば黒が良いと言う。



今までは…出来るだけ揉めない様にしようと感情を殺して来た。


でも、今回の事だけは



あなたに従うつもりはないよ、お母さん」




「…誰に向かって口を聞いてるか分かってるの?貴方の母親は私なのよ。

産んだのも私、育てたのも私。


今貴方がこうして立っていられるのは私のおかげなの!分かる!?」



「でも、傷つけたのもあなただ」



どちらも一歩も引かぬやり取りだったが、この瞬間、悠馬の母が目を見開いて押し黙ってしまった。


その隙を突く様に、悠馬は自分の感情を母親にぶつける。






< 301 / 337 >

この作品をシェア

pagetop