ティーン・ザ・ロック
パァン―――………。
二度目の乾いた音―――――。
今度は、悠馬の母親が頬を抑える番だった。勿論殴ったのは、あたしだ。
「…すみません、でも、やられっぱなしじゃ居られないですから」
ひりひりと手のひらが痛む。多分、無意識に渾身の力を入れたのだろう。
その上、口までが勝手にお説教を始めてしまう。
「あなたは、自分がそんなに大事ですか。彼の気持ちはあなたの中で何番目に大切なことですか。
育ててあげた?立っていられるのも自分のおかげ?
…押しつけがましいのも、度を過ぎると恐ろしいですね」
「…なっ……なっ!!殴ったわね…!」
「そうやって人の話を聞かないのも欠点ですね。
あなたはもう少し、周りに目を向けるべきです。視野が狭いからこんな事になるのを覚えておいてくださいね」
「年端もいかない小娘のくせに…!!
えっらそうにこの私にお説教?あのね、私はあなたが思う以上に大変な思いをして来たのよ!
自分が幸せになって何が悪いの?産んだ子供を自分の望み通りに育てて何が悪いの!!?」
「……あなたに感情がある様に、人にはみんな、感情があります。
勿論、自分の子供に期待をしてもかまわない。こうしろとあれこれ言っても構わない。
でも、子供が否定できる位の余裕を持って下さい。
もう少し、彼に自由を与えてあげてください…。
家に休まる場所が無いなんて、あまりにも辛すぎる…!」