ティーン・ザ・ロック






「五月蠅い…!!」



再度手を振り上げた悠馬の母親だったが、その手は頭上に構えられたまま、振り下ろされる事は無かった。



「…悠子、もうやめなさい」


「母さん。彼女に手を出したら、僕が許さない」



理事長が彼女の腕を抑え、悠馬が庇う様にあたしの前に立つ。



「何よ…何よ!二人とも、私よりその女を庇うの!?」


「庇うとか、そういう事じゃない。


キミはこの機会に、もう少し悠馬の事を考えてやるべきだ。



…君、ありがとう。本来なら私が悠子に叱責するべきだろうに…。如何せんそこまで気が回らない性質でね……。


最近は…少し忙しくて、家の事にも悠子の事にも気を回してやれなかった。きっとそのストレスもあっての事だ。許してやってくれ」



そう言ってあたしに頭を下げてくる理事長。



「いえ!そんな…」



寧ろあたしの方が失礼な事を言っていたのに。


「……キミの様な人が悠馬の側に居てくれて、本当に嬉しいよ…。

きっと、素晴らしいご両親なんだろうね」



「…いえ……」



何だか、悠馬に聞いていた理事長とはまるで別人の様にも思える。


悠馬の事を大切に思っている素振りだ。それに、この様子…。



きっと彼らにも大きな誤解があるのではないかと思った。



でも、悠馬は理事長を睨みつけ、そして………。




「…あなたが親としての発言をするとは思わなかった」



皮肉たっぷりに、嘲笑も交えながら。



普段の彼とはまるで違う人格を見た。




< 304 / 337 >

この作品をシェア

pagetop