ティーン・ザ・ロック
「五月蠅い…!!」
再度手を振り上げた悠馬の母親だったが、その手は頭上に構えられたまま、振り下ろされる事は無かった。
「…悠子、もうやめなさい」
「母さん。彼女に手を出したら、僕が許さない」
理事長が彼女の腕を抑え、悠馬が庇う様にあたしの前に立つ。
「何よ…何よ!二人とも、私よりその女を庇うの!?」
「庇うとか、そういう事じゃない。
キミはこの機会に、もう少し悠馬の事を考えてやるべきだ。
…君、ありがとう。本来なら私が悠子に叱責するべきだろうに…。如何せんそこまで気が回らない性質でね……。
最近は…少し忙しくて、家の事にも悠子の事にも気を回してやれなかった。きっとそのストレスもあっての事だ。許してやってくれ」
そう言ってあたしに頭を下げてくる理事長。
「いえ!そんな…」
寧ろあたしの方が失礼な事を言っていたのに。
「……キミの様な人が悠馬の側に居てくれて、本当に嬉しいよ…。
きっと、素晴らしいご両親なんだろうね」
「…いえ……」
何だか、悠馬に聞いていた理事長とはまるで別人の様にも思える。
悠馬の事を大切に思っている素振りだ。それに、この様子…。
きっと彼らにも大きな誤解があるのではないかと思った。
でも、悠馬は理事長を睨みつけ、そして………。
「…あなたが親としての発言をするとは思わなかった」
皮肉たっぷりに、嘲笑も交えながら。
普段の彼とはまるで違う人格を見た。