ティーン・ザ・ロック
懐の深さ
「何―――――?」
一層の緊迫感が肌をピリピリと刺激する。
睨み合う理事長と悠馬。ただ見守ることしかできないあたしと悠馬の母親。
誰かが動いたら、即座に戦闘が始まってしまうのではないかと思った。
それ程までに今この場所は、危険な空気に溢れている。
……先に口を開いたのは、理事長の方だった。
「…お前は、まだ私の事を父親として認めていないんだな…?」
苦汁を飲む様な顔をしながら、辛そうに言葉を吐く。
「……当たり前。名字も違う、僕の存在も無視し続けて来た人と、何の関わりがあるっていうの?」
「悠馬、お前な、」
頭に来たのだろう。怒鳴りはしなかったものの、声を意識して押さえているのが分かる。
でも、悠馬は理事長の声に被せて話を続けた。
「違う?違わないでしょう?
家にいようが学校で鉢合わせようが、僕は居ないものとして見られて来た。
会話なんてまともに交わした事なんかなかったよね?
今日、こうやって話をしているのが不思議なくらいだ。
それに、浮気相手も居るんだろ?見たんだ、あなたの部屋に見知らぬ女性が入って行くのを。
親としても、夫になる人としても、最低な人間だ」
「悠馬!その言い方は何なのっ!?
浮気相手!?そんなもの、居る筈が無いでしょう!!
親として最低?それは、あなたがこの人を見ていなかっただけじゃない!!!!」
ヒステリックに叫び出す悠馬の母親。
それを理事長が『やめなさい』と言って落ち着かせると、堰(せき)を切った様に泣き崩れてしまった。