ティーン・ザ・ロック




激しい嗚咽がひっきりなしに続く。



その様子を見つめる悠馬の表情は、泣いている母親の物よりも


ずっとずっと辛そうだった…。



「……母さん」


きっと罪悪感を感じているのだろう。今まで故意に泣かせた事なんてなかった筈。


それが彼の存在意味だと言っても良い位に。



母を悲しませない事



ただ、それだけの為に自分の感情をも殺して来た彼にとっては、今、この瞬間が一番辛いものとなるだろう。



でも……耐えて。



君がもっと変わるには、その思いから抜け出さなくてはならない。



もっと、自分の事だけを考えても良いんだよ…。





「悠馬、話を続けよう」


理事長が何かを悟った様な瞳で悠馬を見つめる。



「…でも」


「大丈夫だ。……悠子。そろそろ風馬が帰ってくる時間だ。クッキーを焼くんだろう?」


「……ええ、そうね…。私はキッチンに行くわ……。


二人で、話してくれるかしら…。



……そこの貴女。貴女も手伝って下さる?私、お菓子を作るのは初めてなの」





「え…わ…私ですか?」



悠馬のお母さんは涙を浮かべた瞳であたしを見つめてくる。


急に話を振られて戸惑ってしまった。



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