ティーン・ザ・ロック
甲斐甲斐しい位にあたしの世話を焼き始める優さんにも違和感を覚えつつ
取り分けてもらったお寿司に箸をつけようとしたのだが
「葉瑠」
いつの間にか戻って来ていた兄に声をかけられ、手を止めた。
「……何?」
極力、気にしてないよ という感じで返事を返したつもりだったが
兄はそんな事はお見通しの様だった。
「さっきは悪かったな、大きな声出して。
でも、お前に怒った訳じゃないし。
恭介さん、たまに変な事言って周りを混乱させる時があるから。
気にすんなよ、な?」
ポンポン といつもの慰め方で微笑む兄。だけど…。
兄があたしの些細な感情に気付く様に、あたしだって兄の僅かな異変に気付かないわけじゃない。
眉間にしわを寄せながら笑っている。
それは、いつも兄が嘘を吐く時にする癖だった。
でも、あたしには何も聞けない。
きっと兄も、叔父さんも、皆も
あたしが知らなくていいと思っているから言わないだけなんだ。
それがあたしに関係のある事なのか、はたまた本当に関係のない所の話なのか。
どちらにせよ、あたしの耳に入れたくないのなら、わざわざ聞く必要は無いと思った。
「うん、気にしてないよ」
そう言って微笑んだら
兄は複雑そうに顔を歪めた。