ティーン・ザ・ロック
「ああ、そうだ!ハム子だろう!漢字は“歯無子”」
「あなたそれは入れ歯を入れた方がいいわね!」
「入れ歯ー?おねえちゃん、おばあちゃんなのー?」
もう!!好きなだけ変な名前を考えていれば良いじゃない!この変人家族!!
……とまで思ってしまったが、まさか言える筈も無く。
大人しくコントをひきつった笑いで眺めていると…。
「葉瑠」
「え?」
悠馬に名前を呼ばれた。コント中だった彼らも悠馬に目線を集める。
「“逢坂 葉瑠”。彼女の名前だよ」
「逢坂…?って、まさかあの…製薬会社の?」
「うん、その逢坂さん」
悠子さんがパァァアッとあからさまに表情を変えて、あたしの手を握って来る。
「まぁまぁまぁ!!高校にも寄付して下さってる逢坂さんだったのねぇ!
それならそうと、早く教えて下されば良かったのに…!!
あら…?でも、あのお宅には男の子一人だけの筈だったんじゃないかしら…」
「あ、…私は、姪なんです。
両親が事故で他界したので、今は叔父の所でお世話になっています」
「…そう……。辛い?」
「…両親を思い出すと、たまに泣きたくなる時もあります。でも…。
出来るだけ笑って居たいんです。今私の側に居る人たちの為にも」