ティーン・ザ・ロック
リビングにクッキーとコーヒーとジュースを運びこむ。
こんなに移動距離が長くては、広いお家も中々大変だ。
「…でも、珍しいね。母さんがお菓子作りだなんて」
悠馬が、お世辞でも上手とは言えない形のクッキーを眺めながら呟いた。
風馬君は一生懸命口にクッキーを詰め込んでいる。
「あら、悪いかしら?私だってたまには……」
「悠子、正直に言ったらどうだい?」
言葉を濁す悠子さんを、理事長がニヤケ顔で詰め寄る。
「……べ…別に私はっ」
「悠馬、今日が何の日だったか忘れてないか?」
「……今日?」
暫く考え込む仕草を見せた彼がハッと息を飲んだ。
「…僕の、誕生日……」
「誕生日…?今日!?」
ああ、だから悠子さんは彼にクッキーを……っていうか
「あたし、聞いてない…!!プレゼント、無いっ!!」
「そんなの、良いよ…」
「良くない!!」
付き合って3日後に誕生日だなんて…!!知らなかった自分に腹が立つし、教えてくれなかった彼にも腹が立つ!!
初めての記念日らしい記念日は、当然の如く失敗に終わりそうだ。