ティーン・ザ・ロック
皆で愛を囲み、変な顔をしたりくすぐったり、おもちゃやお菓子で釣ろうとしたり。
色んな事をやって見せるけど、一向に泣きやむ様子が無い。
すると留美が
「お腹すいたんだね?」
と、愛を抱きあげて二階の寝室へと姿を消した。
暫くすると泣き声が止んで、下に残っていた三人が一緒に大きなため息をつく。
…やっぱ母親の力って偉大だよ、ホント。
何が欲しいか、何をしたいか。
言葉は分からなくとも、鳴き声や仕草だけで見分けてしまう力は流石だと思う。
「あ、そうだ。シャワーだけでも浴びて来いよ」
唐突に兄が悠馬に向かってそう言った。
「え…でも、葉瑠を先に…」
「良いから良いから!お客様を丁重に御持て成しするのが俺の使命だ!行け!」
それでもまだ渋る悠馬を、兄は蹴り飛ばしていた。
「はぁ、アイツも頑固だよな。…まだ人に甘えきれないのかもな」
「…大分、心を開く様になったと思うんだけどね」
「……まあ、変わったよな、アイツ。明るくなった」
彼も、足踏みを続けていたわけじゃない。
ほんの少しずつ、だけど
人前でも笑顔を見せる様になった。他の男の子と話すようになった。
まだぎこちなさは否めないけど、着実に“普通のオトコノコ”としての振る舞いが出来るようになっている。