ティーン・ザ・ロック




でも、あたしとしては複雑な乙女心が頭を覗かせるのも押さえきれない。



…女の子達が悠馬の魅力に気付き始めたからだ。



彼がぎこちなく笑うのが“可愛い”らしい。



教室の端っこできゃあきゃあ騒ぐ女の子達を見かけると、ぐっと胃が沈み込む想いをする事が増えて来た。



彼は言わないけど、誰かが告白したと噂で聞いたこともある。



そういう所が危なっかしいと言うか、心配というか…。




悶々とその事を考えていると兄が目の前で手を振っているのに気づく。



「おい、唸り声を出すんじゃない」


「え?出てた?」


口元を両手で押さえて焦って見せるあたしに、兄は緩い笑みを見せた。



「……お前もな、変わったよ、ホント」


……そう…だろうか。



自分の事を客観的に見る事が出来れば分かるのだろうが…。生憎そんなスキルは身につけていない。


「変わったよ。愛想笑いが少なくなった。

本当に嫌な事は嫌と言えるし、悠馬だけじゃなく、周りの事も視野に入って来てる。


……良い友達も、出来たんだろう?」



兄の言葉はあたしの身体中をむず痒くしたけど


最後だけは、力強く頷く事が出来たんだ。




あたしには、本当の親友がいるから。




紅葉――――――――。





あの子もまた、変わった。




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