ティーン・ザ・ロック




夏休み明けに学校に行くと、教室の中が異様な空気に包まれていた。



教室の中に林田がどっかりと居座り、紅葉を側に置いていたからだ。


可哀想な事に、紅葉の隣の席の男子は、鞄を持ったまま教室の後ろでおどおどする事しか出来ない様子だ。


変わりにあたしが注意をする事にする。


「…あの、林田さん。どうでも良いですけど、汚い靴を机に乗せるのはやめてください」


一瞬教室が凍りついたけど…。彼が暴力ばかりを振るう男じゃないと知っているから出来る事だ。



最初は『あ゛あ?』とガンを飛ばして来た彼も、声の主があたしだと分かると、八重歯を覗かせながら笑いかけて来る。



「んだよ、お前か!」



おまけにバシバシと背中を叩かれて、凄く、痛い…!!


「まぁまぁ、どうでも良いなら、んな細かい事気にするんじゃねぇって!

俺様只今絶賛恋愛中」


得意げに言うもんだから、つい吹き出してしまう。


「…五月蠅いよ」


紅葉も林田にガンを飛ばし始めた。



「……あれ、もう猫っかぶりはやめたの?」


「…あんなの、疲れるだけよ。

愛想を振りまいて皆に好かれるのはもう飽き飽きしたの。


素の自分を見てもらえないなら、友達とは言えないって思ったし」



そう言ったっきり、腕を組んで押し黙ってしまった紅葉。


彼女は彼女なりに変わろうと努力をしているんだ。



でも、周りの目はとことん冷たかった。




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