ティーン・ザ・ロック
林田と付き合っている事が公に広まると、いつもそばに居て持て囃していた冬華と奈津が、今度は中傷する側にまわった。
他のクラスメイト達も、陰で紅葉を中傷するようになり
いつも友達で溢れ返っていた彼女の周りには、誰も近寄らなくなってしまった。
それでも紅葉はあっけらかんとして『この程度の人脈だったって事よ』と、自分を冷静に見ていたんだ。
でも、やっぱり放ってはおけなくて。
こういう風に、皆の輪から外れた事を経験したあたしには分かる。
強がっていても、心の中では絶対に辛くて仕方が無いんだ。
お節介なのは百も承知だけど、出来るだけ彼女と一緒に行動しようと勝手に決めて、勝手に実行していた。
最初はウザいと言っていた紅葉も、最近では互いの家に泊まったりダブルデートをする位に仲良くなったんだ。
勿論お互い素で居られる事が最大の条件。
その点では、気がねなく文句も言い合える、まるで姉妹にでもなった気分だ。
何度も口論し、何度も話しあって来たから言える事。
誰も紅葉を信じなくても、あたしだけはずっと彼女の側に居ると思う。
最大のライバルだった彼女は、最高の親友になったのだから。
「…上がりました。……何、話してたの?」
悠馬が髪をタオルで拭きながらリビングに現れる。
その色気に、たまらず目線を外してしまう。
…何度キスを繰り返しても、こういうのには慣れそうもない。不意打ちにとことん弱いのだと初めて知った。
「何でもないッ!只の昔話だし!!
あたし、お風呂入って来る!!」
「…あのな、悠馬。葉瑠はー…」
「お兄ちゃん!!余計な事言ったら殴るだけじゃ済まないからね!!」
「こえーー!!鬼嫁になりそうだ!」
大げさに怖がって見せる兄の声を聞きながら、乱暴に浴室のドアを閉めた。