ティーン・ザ・ロック




「悠馬、行こうか」


リビングに戻って、悠馬に声をかける。



「行くって、何処に。また雪、降りそうだぞ」


兄が窓の外を眺めながら心配そうな声を出す。



「…お墓だから。すぐ戻ってくるよ」



「ええ!?今から?

もうすぐ日も暮れるし…。俺が送って行こうか?」



「いや、それは丁重にお断りさせて頂きます。

…帰りはタクシー呼ぶから、大丈夫」



「……気を付けてな。ちゃんと帰って来るんだぞー」



兄はまだ、あの日の事を忘れていないのだろう。



あの、夏の日の事を。





考える事に疲れ、何もかも放り出して逃げだしたくなったあの日。



自分なりに懸命に向き合って来たつもりだった。



でも、問題は一向に良くならなくて………。




だから、逃げる事を選択した。



逃げて、逃げて。




いつか、問題自体を忘れられる日が来る事を願っていた。



……でも……逃げるだけじゃ、駄目だった。






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