ティーン・ザ・ロック
「…キミ一人、どんな生き方をしようが 今までは口を出す権利は無かった。
はっきり言ってしまえば、所詮甥っ子だからね。
自分の子どもなら、親のエゴも押し付ける事が出来る。でも、キミには立派なご両親が居た。だから私なんぞが口を挟む必要が無かったんだ。
…だが、今は違う。
今は…私がキミ達の保護者だ。少なくとも私はそう思っている。
大事な弟の忘れ形見を見守るのは私にしかできないとも感じているんだ。
だから言わせてもらう。馬鹿を言うんじゃない。キミは働くという事の責任と辛さを分かっていない。
それに、キミは一人じゃないだろう?葉瑠ちゃんはどうなる?
大事な時期に両親を亡くして、兄である要君が支えないで誰が気持ちを汲んでやれるんだ!?唯一無二の妹を、キミは見捨てるというのか!!?」
テーブルの陰から少し見えた叔父さんの両手は、拳となってふるふると震え、
少し俯き加減の顔から覗く両目は充血し、今にも殴りかかりそうな眼差しで、兄の伏せた目を睨みつけていた。
「…見捨てるんじゃない」
ポツリと聞こえた、迷いのない一言。
それは紛れもなく兄の口から出た言葉だった。
「見捨てるんじゃない。見守るだけだ。
俺は、葉瑠の事も大事だけど、この家も同じくらい大事なんだ。
父さんたちが守ってきた家だから、今度は俺が守る番だと思う。
素直に喜べないけど、ローンも無くなったし…要るのは生活費だけだ」
だから
「俺は、いつか葉瑠と一緒に暮らせるその日まで
“帰る場所を守る”って、決めたんだ。
叔父さん…。俺の気持ち、叔父さんなら分かってくれると思ってるんだよ…」
お願いします と、頭を下げた兄を見て
叔父さんは涙を流していた。