ティーン・ザ・ロック
何も言わず、ただただ透明な滴を頬に伝わせる叔父さんに
兄は再び頭を下げた。
「葉瑠を…。
俺が葉瑠と一緒に暮らせるようになるまで。
どうか、お願いします。
俺の、たった一人の家族なんです」
…何故この時、兄はこの決断を下したのか。
何故他の選択を選ばなかったのか。
疑問は後にも先にも解ける事は無かったのだけれど。
ただ一つ分かる事は、兄はいつでもあたしの事を大切に思っているという事だった。
だから、言わない。
寂しい、だなんて。
一緒に暮らそう だなんて。
何を考えての結論か、そんな事は想像もつかないけれど
家族を何よりも大事にしていた兄が決めた事だ。
きっと、何か考えがあるのだろう。
結局、他力本願で、最後まで何にも出来なかったあたしには
せめて兄の困る様な事をしないようにすることしか思いつかない。
だから…
「…叔父さん、叔母さん。
……宜しくお願いします」
色々な感情を胸の中に押し込めて、兄と一緒に頭を下げる。
今はこうするしかないんだ。
兄を困らせず、兄と一緒に住む方法なんて
たった15歳のあたしには思いつかなかったんだよ。