ティーン・ザ・ロック
暫くの間黙っていた叔父さんだったが、最後には『わかった』と言ってくれた。
「ただし、一人暮らしが始まったら月に一度は会いに来る事。往復の新幹線代くらいは私が出すから。
だから、必ず葉瑠ちゃんに会いに来てくれよ」
「…ありがとうございます……必ずそうします」
叔父さんはそこまで言うと、大きくため息を吐いて 静かに兄の傍へと移動した。
そして、大きな手で ゆっくりと兄の頭を撫でる。
「…きっと、色々考えた上での決断だろう。でも…辛くなったら、いつでもうちに来なさい」
お父さんに似た、大きくてごわごわした手。
何もかもを包み込んでしまう位、優しくて、頼もしい手だと思った。
「…さて、私たちは一旦帰るよ。
…ああ、行く前に決めておこうか。
葉瑠ちゃん。卒業まで半年も無いが…。どうする?ここで卒業式を挙げるかい?」
自分のことながら そうか、と思った。
卒業式か…。
特に思い入れのある学校と言う訳でもないし、友達に未練はあまりない。
だけど、これから兄と離れて暮らすんだと思ったら、少しでも一緒に居たいと思ってしまう。
これじゃあ、周りからブラコンだと言われるのは間違いでは無いな、と心の中で苦笑した。
「卒業まで、この家に居ます」
「そうだね、それが良いかもしれないね。
じゃあ、高校はこちらで見つけておくよ。後で見つくろったパンフレットを郵送するから、その中から選ぶと良い。それと、担任の先生に事情をきちんと話しておいてくれるかな?」
「はい」
気のない返事をすると、叔父さんは悲しそうに微笑んだ。
「すまないね。ごたごたすると思うが、頑張ろう」