ティーン・ザ・ロック
頑張ろうなんて改めて言われても、何も返す言葉が見つからず、ただ無言で頷いた。
あたしが頭を下げるのを満足そうに見てから
さて と言って立ちあがる叔父さん。
「そろそろ出ないと。夕方には一度会社に行かなくてはならなくてね」
「何かあったら、教えたケータイの番号にかけてね」
優さんもそれに続いて腰を上げた。
「はい、気を付けてくださいね」
兄も立ちあがろうとするが、叔父さんに ここでいいよ と制されていた。
「じゃあ、また近いうちに」
「身体には気を付けるのよ。くれぐれも無理はしないでね」
「はい」
幼い子供を諭す様な優さんの口調に、兄とあたしは顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。
優さんは玄関を出るまでそんな調子で。
扉が閉まった瞬間に、二人でソファーにもたれかかってしまった。
「…優さん、同じ事三回位言ってたよな」
「うん、ちょっと、疲れた」
わざとらしく大きくため息を吐いて見せると、兄は『バーカ』と言って笑った。
しばしの沈黙。
隣を見ると、目の上に腕を当てて、今にも眠りそうな雰囲気を出している兄がいる。
本当に眠いのだろうか。それとも…何かを考えている?