ティーン・ザ・ロック
何かを話さなくては、と思う反面
何を話題に振ったら兄が笑ってくれるかなんて分からなくて
結局、沈黙のまま時間が過ぎていく。
話す内容を考える事に時間を費やしてしまうが
いつも考え付くのは 一つの質問しかなかった。
けど、その質問を口に出してしまったらダメな気がする。
聞きたくて仕方のない事なのに、聞いてしまったら…
何かがおかしくなりそうな、そんな気がした。
だが、このままだとあたしの頭がパンクしそうだ。
「ね…ねぇ、おにいちゃん…」
「んー?」
誘惑に負けてしまった自分が大っ嫌いだ。
意を決して放った言葉のせいで、口を開いてしまった事に心底後悔する事になるのに。
「……何で一人でここで暮らすって言ったの?」
ぐるぐると巡っていた質問。
何故兄は『一人で』ここに居る事を選んだのか。
それが聞きたくてうずうずしていたのに
話す前よりも、もっともっと静かになった部屋の中に あたしの居場所は無い様に思えた。
「…さっき言った通り。この家は思い出が詰まり過ぎてる。
俺は17年間過ごして来たこの家を守りたいと思った。……それじゃ、納得できないか?」
「…それならっ!それなら…あたしも…」
残る と 最後まで言えなかった。
兄が目を伏せて、ゆるゆると首を振ったからだ。
「お前はダメだ」