ティーン・ザ・ロック


何かを話さなくては、と思う反面

何を話題に振ったら兄が笑ってくれるかなんて分からなくて


結局、沈黙のまま時間が過ぎていく。


話す内容を考える事に時間を費やしてしまうが


いつも考え付くのは 一つの質問しかなかった。



けど、その質問を口に出してしまったらダメな気がする。


聞きたくて仕方のない事なのに、聞いてしまったら…



何かがおかしくなりそうな、そんな気がした。


だが、このままだとあたしの頭がパンクしそうだ。



「ね…ねぇ、おにいちゃん…」


「んー?」




誘惑に負けてしまった自分が大っ嫌いだ。


意を決して放った言葉のせいで、口を開いてしまった事に心底後悔する事になるのに。



「……何で一人でここで暮らすって言ったの?」



ぐるぐると巡っていた質問。


何故兄は『一人で』ここに居る事を選んだのか。


それが聞きたくてうずうずしていたのに


話す前よりも、もっともっと静かになった部屋の中に あたしの居場所は無い様に思えた。




「…さっき言った通り。この家は思い出が詰まり過ぎてる。


俺は17年間過ごして来たこの家を守りたいと思った。……それじゃ、納得できないか?」


「…それならっ!それなら…あたしも…」


残る と 最後まで言えなかった。


兄が目を伏せて、ゆるゆると首を振ったからだ。


「お前はダメだ」



< 38 / 337 >

この作品をシェア

pagetop