ティーン・ザ・ロック
自己嫌悪に落ち入り、視界を遮る滴を手でぬぐっていると、頭の上に温もりを感じた。
この温かさ、知ってる…。
「…葉瑠。分かってくれ。
お前には、幸せになって欲しいんだ。俺はさ…。
色々とオヤジたちに迷惑かけてただろ?深夜徘徊で補導とか、バイクでメット無しのニケツで白バイに追いかけられたりさ。
ずっと真面目に、母さんたちの理想でいてくれたお前がいたから 俺は好き勝手やってこれたんだぞ?
だからさ、ちゃんとした家庭で、ちゃんとした人生を送って欲しいんだ。
…分かってくれるよな…?」
頭を撫でながら、優しい声で。
そんな事言われたらあたし…。もう、何も言えないじゃん…。
「………あたしが嫌いになった訳じゃないんだよね…?」
「馬鹿かお前ー。
嫌いなわけねぇだろ?全部、お前の事を考えて出した答えだ。
それに、離れてもすぐ会えるだろ。叔父さんはあんな条件出したけど、
元々、その位は会いに行くつもりだったんだから。
……ってか、なんだこの会話。恋人みてぇだな」
「……馬鹿」
「おっ?笑った?笑ったな、今」
「うっさい!!笑ってないもん!」
ケタケタと、特徴的な笑いであたしを茶化す兄。
いつもそう。あたしが泣くと必ずこうやって笑うまで茶化し続ける。
そんな兄にいつも救われてきた。だからこそ、今度は兄が安心出来る様に
兄の望む事をしなくちゃ…。