ティーン・ザ・ロック
コンクリートジャングル
「おにいちゃーーん!!!もう出るよーー!?」
「だ――――ッ!!ちょ…ちょっと待て!!」
ガラガラと、ティッシュホルダーのせわしない音が玄関先まで鳴り響く。
全く。今日はもうあたしの出発の日だというのに
最後の最後でカッコいいお兄ちゃんが見れないとは。
大きくため息を吐いて、腰を下ろした。
……去年の11月20日に、給料は安いが、働く先が決まったと報告された。
大工の見習いらしい。実際にこっそりと仕事の様子を見に行ったこともあったが、おじさん達の中で元気に走り回っている姿を見て、ちょっぴり感動してしまった。
初月給でクリスマスプレゼントを買って貰ったりも。
それは、初めての、ケータイだった。
真っ白で、スライド式で、カメラの画素数が一番良いヤツ。
それでたまに写メを撮って送れよ、と 笑って渡してくれた。
勿論メモリの一番最初は兄の名前を登録して
後は……
おじさんたちの物しか入っていない。
田舎と言っても良い程の地域に住んでいるからか、中学生でケータイを持っている人は殆どいなかった。
それに、この町から去るのに、誰かの連絡先なんか入れても仕方ないと思っていた。
親友の、留美の物ですら。