ティーン・ザ・ロック
数少ないケータイ保持者の留美なら、きっとアドレスを聞いてくるだろう。
でも、確実に連絡はしてこない。
彼女にとっては、側に居ない相手を親友だと言っても意味がないのだから。
…それに…。あの陰口を聞いてしまってから、心からは信用出来なくなっていた。
だから、ケータイを持ったことすら教えなかった。
コレで良い。あたしなんか、忘れ去られてしまえ。
留美だって、きっとすぐに新しい“親友”を作るだろう。
だから、良い。寂しいけど、良いんだ。
家族である兄さえいれば、それで良い。
「お兄ちゃん!いい加減にしないと勝手に行くよ!」
「今行く!!」
全く…。
本当に行ってしまおうかと思った時。
誰かの訪問を知らせる音が鳴り響いた。
こんな時に誰だろうと思いながら扉を開けると…
「あーーー!!良かったぁ!まだ出発してなかったんだねッ」
「留美…!?」
来ないと思っていた親友が、息を切らせて玄関に立っていた。
「あのね、これだけ渡したくて…」
手渡されたのは、ラッピングされた小さな箱。
「ありがとう…。わざわざ、ごめんね?」
「いーってばー!!親友との最後の別れだもんね。
ホント、寂しくなるよ…」
「うん…」
ギュウッと抱きつかれて、何だか複雑な気分だった。