ティーン・ザ・ロック
本当に寂しいと思ってる…?心の中じゃ、厄介払いができて嬉しいんじゃないの?
ちらりと頭をかすめた黒い考え。
身体を離した彼女の顔を見ても、その思いは読みとれなかった。
「所で、要さんは?」
一緒に駅まで行くんでしょう?
そう言って家の中を覗き込む留美。
あたしは『またか』とげんなりしてしまった。
最近の彼女は、口を開けば『要さんは?』と、逐一兄の様子を伺ってくる。
きっと、親友の兄以上の感情を持っているのだろうけど…
何だか、良い気分じゃなかった。
だから、だろうか。
「あー…お兄ちゃん、今トイレ行ってる。中々出てこなくて、先に行っちゃおうかと思った位」
こうやって、彼女が兄に幻滅するように、兄のカッコ悪い事も報告しているのだが。
「あはははっ!!要さん、何食べたんだろーっ」
何を言っても彼女は嬉しそうに笑ってしまう。
きっと、兄に彼女ができるまでは、こうして思い続けているに違いない。
そうこうする間に、やっと兄がトイレから出て来たようだ。
「おっまたせ~!!っと、何だ。さっきのチャイム 留美ちゃんだったのかー」
「ふふっ。こんにちわー!要さん、お腹下してるんですかぁー?」
「…葉ぁ~瑠ぅ~。変な事教えてんじゃねーよ!」
「だってホントの事じゃん!それより時間!!
タクシーつかまえないと、新幹線乗り遅れるってば!!」
本当はまだチケットも買っていないし、今日中に着けば何時でも構わないと言われていたけれど
今は…早く兄から留美を遠ざけたかった。