ティーン・ザ・ロック
兄は口をとがらせて『へーへー』と、スニーカーを履き始めた。
ホッとしたのもつかの間。
「あ、良かったら留美ちゃんも一緒に見送り行くかー?どうせタクシー使うんなら、二人でも三人でも同じだからさ」
兄が余計な事を言い始めた。
何…?せっかく遠ざけてあげようとしてるのに!何で余計なことばっかり言うんだろ。
留美、断らないかな…。
だけど。
やっぱり物事はあたしの思い通りに行かないらしい。
「良いんですか!?最後だし…ちゃんと見送ってあげたかったんですッ!
だってあたしの親友ですから!ね、良いよね?」
「あー…あははは…。うん。嬉しいーー…」
「じゃあ、行くかー」
「ハイッ!」
……馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!
あたしの棒読みの台詞に気付かないわけ?
留美はお兄ちゃんの事が好きだから、あたしと一緒に居るに決まってるッ!
そんな事にも気付いてくれないの?鈍感過ぎるよ!!
むかむかと、胃に穴が開く思いをしながら、後部座席に乗り込んだ。
20分の道のりも、窒息死するんじゃないかと思う位に居心地が悪かった。
……あたし、何でこんなに親友と兄が話す所を嫌だと思ってるんだろ…。
きっと、相手が留美じゃなかったら…また違う感情だったに違いないのに…。
………ああ、そうか。
多分あたしも、留美を親友だと思っていなかったんだろうな。
三年前、彼女の黒い感情を知ってしまったから。
だから、素直に応援できないんだ。