ティーン・ザ・ロック




兄は口をとがらせて『へーへー』と、スニーカーを履き始めた。


ホッとしたのもつかの間。



「あ、良かったら留美ちゃんも一緒に見送り行くかー?どうせタクシー使うんなら、二人でも三人でも同じだからさ」


兄が余計な事を言い始めた。


何…?せっかく遠ざけてあげようとしてるのに!何で余計なことばっかり言うんだろ。

留美、断らないかな…。



だけど。


やっぱり物事はあたしの思い通りに行かないらしい。


「良いんですか!?最後だし…ちゃんと見送ってあげたかったんですッ!

だってあたしの親友ですから!ね、良いよね?」



「あー…あははは…。うん。嬉しいーー…」


「じゃあ、行くかー」


「ハイッ!」




……馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!


あたしの棒読みの台詞に気付かないわけ?


留美はお兄ちゃんの事が好きだから、あたしと一緒に居るに決まってるッ!

そんな事にも気付いてくれないの?鈍感過ぎるよ!!



むかむかと、胃に穴が開く思いをしながら、後部座席に乗り込んだ。



20分の道のりも、窒息死するんじゃないかと思う位に居心地が悪かった。



……あたし、何でこんなに親友と兄が話す所を嫌だと思ってるんだろ…。



きっと、相手が留美じゃなかったら…また違う感情だったに違いないのに…。



………ああ、そうか。



多分あたしも、留美を親友だと思っていなかったんだろうな。


三年前、彼女の黒い感情を知ってしまったから。



だから、素直に応援できないんだ。



< 46 / 337 >

この作品をシェア

pagetop