ティーン・ザ・ロック
「嘘だ…」
この異常な雰囲気で、何らかの不幸は覚悟していた。
けれど
それがこれほどまでの物だとは思っても居なくて
告げられた事実を理解するなんて、今の私には到底無理な話だった。
「嘘なら、良いんだけどな。
―――帰りのバスでさ、高速乗ってて。
突然対向車がガードレール突き破って…バスの前を走ってた車に衝突したんだって。
しかもその対向車ってのが、ガソリン運んでたトラックで…
あっという間にバスまで燃えちまったって…。
多分今、ニュースやってるから。…嘘だと思うなら見てみろ」
言いながらリモコンを手にした兄は、躊躇無くテレビの電源を入れる。
「やだっ!!」
嘘だと思った。
ずっとずっと、嘘だと思っていたかった。
それなのに…
光を宿した、その薄い箱は
容赦なく現実を突き付けてくる。
『番組を変更して、急遽報道を行っております。
えー、本日、15時を過ぎた頃――ガソリンを積んだトラックがガードレールを突き破り
対向車線を走っていた軽自動車に追突―――――。
その後トラックは横転し、次々と車がトラックに衝突して炎上。
漏れ出したガソリンに火がつき、車数十台を巻き込みながら爆発した、という模様です。
今見て頂いている映像は、上空から撮影したもので――――…
少なくとも死者は34名…重傷者は……』
「ヤダって言ってるでしょっ!!?
もう、そんなの消してよぉ!!…今は…見たくないよ…!!!!」
叫ばずには居られなかった。
そうでもしなければ、自分がおかしくなってしまう気がした。