ティーン・ザ・ロック
停車直前の激しい揺れの後、ゆっくりと開くドア。
出口に向かうたちの後に続いて外に出る。
田舎とは違って、空気も温度も違う事を覚悟していたのに
一歩車外に出ると、そこは田舎とあまり変わらないように思える。
相変わらず寒いし、空気だって悪いとは思わない。
自分の感覚が鈍ってしまったのだろうか?
ただ、地元を出てくる時に見た雪の名残は、ここには無い様だった。
一度鼻を啜って
改札に向かって歩き始めた。
エスカレーターを降りると、そこには今まで見たことも無い程の人、人、人。
地元の祭りでもこんなに混雑していなかった。
そこでやっと自分が東京に来たのだと実感した。
あまりの人の多さに目を回しかけた時
「葉瑠ちゃん」
あたしの名を呼ぶ、懐かしい声があがった。
何処からする声かと目線を人ごみから移すと、改札口のすぐ側によく見知った顔を見つけ、少し安堵する。
「雪さん!」
叔父さん達の一人息子である雪さんが、優しい微笑みで小さく手を振っていた。