ティーン・ザ・ロック
雪さんとの会話を思い出しながら、与えられた部屋で姿見の前に立つ。
中学の時にはスニーカーで登校していたあたしも、ついに今日ローファーデビュー。
茶色い制服に合わせて、こげ茶色の物を選んで見たがちゃんと合っている様だ。
155センチとあまり高くない身長でも、いつもとは雰囲気の違うものを身にまとうと
何故だか大人っぽく見えてしまう。
自分の嬉しい変化にニヤケていると
「葉瑠ちゃーん!そろそろ行きましょー!!」
優さんの声がリビングから聞こえて来た。
「今行きまーす!」
もう一度鏡を確認して、指定のバッグとローファーを手に部屋を出る。
階段を下りると、優さんが笑顔で迎えてくれた。
「似合うわ~!!葉瑠ちゃん!」
「そ…そうですか…?」
「んもう、雪の時よりも嬉しい位!やっぱり女の子は違うわねぇ…」
頬に手を添えて『ほぅ…』とため息まで吐く位に誉めちぎって貰えて、今までにない位とても恥ずかしかった。
「じゃ、行きましょうか。叔父さんと雪も後から顔を出すって言ってたわっ」
ビデオカメラ片手にニコリと微笑む優さんは、まるで本当のお母さんみたいで…。
もしお母さんが生きていたら、なんて考えてしまったり。
……ダメだ。こんな時に何を考えているんだろう。
慌てて、想いを振りきる様に首を横に振った。